鯉料理
神戸では結婚式の披露宴を始め、ちょっとした宴会まで中華料理をよく食べる。中華料理の好きなわれわれ神戸人たちは、鯉料理といえば、料理の最後に出てくる鯉の唐揚の甘酢あんかけが頭に浮かぶ。カリカリに揚げられた鯉の丸揚げは、甘酸っぱいあんかけによく合うようだ。
しかし、鯉が出てくる頃は、それまでにビール、老酒、各種料理で、ほぼ満腹になっていて、ほんの一箸か二箸しか食べられない。味覚神経も疲労困憊のもうろう状態で、旨かったなー、という印象が薄い。もったいない話だ。もっと早く、前菜の次ぐらいに出てくれば、たっぷり賞味できるのだが...と、いつも思う。
和食の鯉料理は歴史が古い。話が飛躍するが、実は池波正太郎のファンで、鬼平犯科帳、剣客商売、仕掛人梅安などは、文庫本だが全巻揃えて持っており、今でも時々引っ張り出して読んでいる。池波正太郎が食い道楽だったせいか、江戸時代の料理の話がよくでてくる。
自らを鬼平狂と称する食通作家の佐藤隆介さんが編纂した 「池波正太郎・鬼平料理帳」 (文春文庫、1984年) は、池波正太郎の座談と、鬼平の中で料理が出てくる部分の抜粋とからなっている。鬼平に載っている料理が網羅、整理され、原文が引用されており、例えば芋酒の出てくるくだりはどこだったかな...などという時は非常に役に立つ。当然ながら鯉料理も出てくる。
鬼平の 『むかしなじみ』 の中で、「先ず、そぎとった鯉の皮の酢の物。同じく鯉の肋肉 (あばらにく) をたたいて団子にし、これを焙った (あぶった) ものへ、とろみのついた熱い甘酢をたっぷりとかけまわした一皿など、珍しい料理が出たものだから...」 と記されている。(上掲本131頁)
山間の温泉には、よく旅行したが、必ず鯉料理が出される。しかしこんな料理は食べた記憶がない。昔のことなので記憶が曖昧だし、酔っぱらって無意識に食べてしまっていたかも知れないが、とにかく憶えていない。
「先ず、平蔵が大好物の酒の肴が出た。これは削 (そ) ぎ取った鯉の皮を細く切って、素麺 (そうめん) と合わせた酢の物と、雄の鯉の肝の煮つけである。...夏の鯉は味が落ちるというが、鯉の皮にふくまれた濃い脂を合わせ酢がやわらげていて、何ともいえぬ味わいだ。」(鬼平 「蛇苺」、上記131頁)
これも食べた記憶がない。鯉の肝の煮つけは食べたような気もするが、鯉の雌雄で肝の味が変わるのだろうか。
和食で鯉料理といえば、なんといっても {洗い} と {鯉こく} だろう。山間の温泉旅館などに泊まると、必ず出てくる。しかしこれが旨いと思ったことがない。大抵はご当地屈指の一流旅館だから、さぞかし名の通った板前の料理なのだろうが、旨くない。こちらの嗜好のせいか、味覚神経に異常を来しているのか、ともかく旨くない。池波正太郎の筆にかかると、涎が出そうになるが、実際にはこんな旨い鯉料理に巡り会ったことがない。よほど鯉には縁がないらしい。情けない話だ。
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コメント
>和食で鯉料理といえば、なんといっても {洗い} と {鯉こく} だろう。山間の温泉旅館などに泊まると、必ず出てくる。しかしこれが旨いと思ったことがない。
京都は洛北、山荘料亭貴船ふじやを一度お試しになってみては?
鯉の薄造りは、鯉の癖が生きつつ絶妙な歯ごたえがあります。季節は過ぎましたが、鮎の天麩羅も美味しいと思いました。
投稿: 京都人 | 2006年11月11日 (土) 04時10分
京都人さん、コメントをありがとうございました。
貴船の川床料理は、勤め先の日帰り旅行で何度か行きましたが、ふじやさんではなかったと思います。
いずれ機会を見付けて、お勧めの鯉料理をふじやさんで食べてみようと思います。
投稿: 古希じい | 2006年11月11日 (土) 08時27分