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結婚式の披露宴によばれると、よく、一筆お願いします、といって色紙などがまわってくる。そこで、
「盡人事而待天命」
か
「将欲奪之、必固与之」
か、を書くことにしている。若い時に習字でも習っておけばよかったのだが、人に見せたくもない金釘流は、老いてますます玄奥に達しつつある。こればかりは今さら、いかんとも致しがたい。せめて漢文など書けば、少しはエラく見えるんじゃなかろうか。
前者は 「人事を尽くして天命を待つ」 と読み、「人間として出来るかぎりのことをして、その上は天命に任せて心を労しない」 (広辞苑) といった意味。
中国、南宋の文人政治家・儒学者であった胡寅 (こいん、1098年~1156年) という人が書いた 「読史管見」 という評論集に記されているそうだが、見たことはない。
が、昔からたいへん有名な言葉で、気に入っている。ろくに人事を尽くすこともなく、のんべんだらりと今日まで、なんとなく天命とやらを待っている間に、すっかり老いさらばえてしまった。天命の代わりに、あの世からのお迎えが来るはずだ。
後者は、中国の春秋時代の思想家として知られる老子 (ろうし、紀元前5世紀頃) の書とされるが、その履歴については不明な点が多く、実在も疑われている。
老子第36章 (小川環樹訳注、中公文庫 「老子」 74頁) に、
「将欲歙之、必固張之。将欲弱之、必固強之。将欲廃之、必固興之。将欲奪之、必固与之。」
とあり、「将に之を奪わんと欲すれば 必ず固く之に与う」と読む。「固」 というのは、「カタい、モトより、まことに」 といった意味。縮めたければ延ばし、弱めたければ強め、廃したければ興 (おこ) せ、に続いて、欲しければ先ず与えなさい、といっている。
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要するに、何かしたい時は、その前に先ず、したいことの逆をしなさい、と老子は説く。欲しければ、先にあげなさい。親切にされたければ、親切にしなさい。飛ぶ前には縮みなさい。愛されたければ、先に愛しなさい。まさしく至言で、ごく当たり前のことだが、それがなかなかできない。
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なお、韓非子 喩老第21章4 (金谷治訳注 岩波文庫 「韓非子第2冊」 80頁) にも引用されている。字句は少し違うが、老子の言葉として、「将欲取之 必先与之」 とある。こちらのほうが判りやすいので、最近はこの方を書いたりもする。
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