毎日毎日カタカナ語の氾濫に悩まされる。イノベーション、インセンティブ、エッセンシャル、エビデンス、カミングアウト、コンシェルジュ、コンセプト、スキル、スキームなどなど無限に近い。コメディカルなどという和製英語もあり、外来語辞典だけでなく、国語辞典などにも載っている。
中国文化だけを受け入れていた昔は、外来語とはいえ、意味の見当が付く漢字だったから、どうということもなかった。幕末から明治にかけては、西欧文化がどーっと流れ込んできた。当時の人たちは、それを四苦八苦しながら漢字に翻訳して新語を作った。
西周(にしあまね)や福沢諭吉、中江兆民、坪内逍遥、森鴎外などは、「哲学」、「概念」、「演繹・帰納」、「心理学」、「現象」、「想像力」、「消費」、「権利・義務」、「文学」、「小説」、「脚色」、「共和・民主・自由」、「鉄道」、「演説」、「為替」などを造ったといわれている。
また、「文化」、「作者」、「運命」、「男性・女性」、「業績」、「象徴」、「芸術・美学」、「人民」、「議会・政党」、「歴史」 なども彼らの労作とのこと。一方、日本で作られた 「市場」、「組合」、「時間・空間」、「体育」、「代表」、「重軽工業」、「土木」、「百貨店」 などは、そのまま中国語になっているそうだ。
日経新聞朝刊の最終ページには、「交遊抄」 という小欄があり、名の通った方々の投稿が載っている。その欄が日曜日だけは 「うたの動物記」 となる。和歌や俳句などに取り上げられたた動物について、歌人の小池光さんが、おもしろいエッセイ風の読み物をお書きになっている。
5月24日は 「カメレオン-変幻蜥蜴に魅せられた夭折作家」 で、生誕百年を迎えた中島敦が取り上げられている。その中で楽しい記述を見付けた。
|
遠い熱帯の爬虫類であるカメレオンには和名がない。いささか残念なので和名を考えた。
変幻蜥蜴
というのはどうだろう。おごそかにも妖しく、数倍存在感が重厚になるように思われる。
|
最近の外来語がカタカナ語に訳されるのは、翻訳者の日本語力が低下したわけではないだろうが、安易に流れすぎている。それに、カタカナ語のほうがカッコいいと思う人がふえたからではないか。西欧コンプレックスかも知れない。国産の商品名までがカタカナ語になっている。
せめて企業名や商品名ぐらいは漢字にして欲しい。エビデンス (証拠)、イノベーション (改革)、インシデント (阻害要因) などと、カタカナの後にわざわざカッコ書きで漢字を書いている文書に出会うこともある。それぐらいなら、エビデンスではなく、証拠と書けばよい。
上の変幻蜥蜴など、ヘンゲントカゲと音に出してみると、また格段のおもむきがあり、すばらしい響きだと思う。れっきとした日本語があれば、日本語を使う。無ければ、工夫を凝らして、新しい漢字の日本語をつくればよい。外国語をそのままカタカナにするような怠惰からは足を洗って欲しい。
最近のコメント