外来語、翻訳、カタカナ 続編
6月2日付け外来語、翻訳、カタカナの続きになる。昔は外国の国名や地名を漢字で表記して、それにルビを振っていた。今でもその名残で、アメリカは米、イギリスは英、ドイツは独、フランスは仏、ロシアは露などと表記している。カタカナ3~4文字を漢字1文字で表せるから、書くのは楽だしスペースも少なくて済む。
ただしイギリスがはじめから英だったわけではない。イギリス=エギリスを英吉利と漢字表記し、その頭文字を採って英にした。米もアメリカ=メリケンを米利堅と音訳して米。神戸にはメリケン波止場がある。フランスは仏蘭西の仏、ドイツは独逸の独、イタリアは伊太利亜の伊などとなっている。
これをみると外国名の音が、当時の日本人にどのように聞こえていたかも推察できる。アメリカはメリケンと聞こえていたようだし、イギリスはエギリスと聞こえていたようだ。ドイツも英語のジャーマンではなく、ドイツ語のドイッチュをドイツと聞き、その音から独逸になっている。
だが、アメリカは米利堅だけではなく、亜米利加、亜墨利加、亜美利加、美理可など、いろいろな表記があり、まちまちだった。しかしたいていはアメリカとルビを振っていたので、読むのに困るということはなかった。やがて漢字を省略して米としたり、ルビをそのままアメリカとするようになった。
世界地図を開いて国名や地名だけでなく山や湖川まで、片っ端から漢字化していく作業は大変だったと思う。市俄古=シカゴのように音をそのままというのが多いが、なかには 「剣橋」 と書いてケン ブリッジ ( bridge ) と読ませるような、音と意味とが合成された傑作もあった。
そのほかにも主な漢字と略漢字を挙げておこう。
| 国・地名 | 漢 字 | 略漢字 |
|---|---|---|
| ヨーロッパ | 欧羅巴 | 欧 |
| カナダ | 加奈陀 | 加 |
| ブラジル | 伯剌西爾 | 伯 |
| ニュージランド | 新西蘭 | 新 |
| ポルトガル | 葡萄牙 | 葡 |
| ノルウェー | 諾威 | 諾 |
| オランダ | 和蘭、阿蘭陀 | 蘭 |
| オーストリア | 墺太利 | 墺 |
| スペイン | 西班牙 | 西 |
| ベルギー | 白耳義 | 白 |
| ウィーン | 維納 | 維 |
漢字の国、中国ではカタカナがないので、当然ながら全部漢字表記になる。日中全く同じというのもあれば、微妙に独自性を発揮しているのもあり、比べてみるとおもしろい。国名にかぎって以下に表記してみる。
| 国 名 | 日本語 | 中国語 |
|---|---|---|
| アメリカ | 亜米利加 | 亜美利加 |
| アメリカ合衆国 | 亜米利加合衆国 | 美利堅合衆国 |
| インド | 印度 | 印度 |
| ビルマ | 緬甸 | 緬甸 |
| タイ | 泰 | 泰 |
| オーストラリア | 濠太刺利 | 澳大利亞 |
| オーストリア | 墺地利 | 奥地利・奥地利亞 |
| イタリア | 伊太利亜 | 義大利・意大利 |
| フランス | 佛蘭西 | 法蘭西 |
| ドイツ | 独逸 | 徳意志 |
| ベルギー | 白耳義 | 比利時 |
| スイス | 瑞西 | 瑞士 |
| オランダ | 和蘭 | 荷蘭 |
| デンマーク | 丁抹 | 丹麥 |
| ハンガリー | 洪牙利 | 匈牙利 |
| フィンランド | 芬蘭 | 芬蘭 |
| ロシア | 露西亞・魯西亞 | 俄羅斯 |
| イギリス (ブリテン) | 大不列顛・英吉利 | 大不列顛 |
| イングランド | 英蘭 | 英格蘭 |
| スコットランド | 蘇格蘭 | 蘇格蘭 |
ついでに、国名以外の地名についても比較してみる。
| 地 名 | 日本語 | 中国語 |
|---|---|---|
| アフリカ | 阿弗利加 | 阿非利加 |
| ラテン | 羅甸・拉丁 | 拉丁 |
| ワシントン | 華盛頓 | 華盛頓 |
| ニューヨーク | 紐育 | 紐約 |
| サンフランシスコ | 桑港 | 聖佛蘭西斯科 |
| ロンドン | 倫敦 | 倫敦 |
| ベルリン | 伯林 | 柏林 |
| パリ | 巴里 | 巴黎 |
| ローマ | 羅馬 | 羅馬 |
| ハンブルク | 漢堡 | 漢堡 |
| モスクワ | 莫斯 | 莫斯科 |
| シンガポール | 新嘉坡 | 新嘉坡 |
| バンコック | 盤谷 | 盤谷 |
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